絵画という小道具
プロップ=
小道具、大好きです。
春までの勤め先も小道具を取り扱う会社でした。
映像は小道具を大活躍させられます。
クローズアップという見せ方が出来るのです。
煙草や酒の銘柄が読めるくらい大写しにできる = それを飲む人の趣味嗜好を画にできる。
主人公の愛用品についた傷も見せることができる = 主人公がその品をどう扱っているか、さらに主人公の性格の一端まで見せることができます。
「オレはこの○○をもう○年使ってる。あちこちガタがきてるが、一番使いやすいんだ。大事な相棒さ」
こういうセリフが要らなくなります。
その小道具とそれを扱う男の姿を撮影するだけで、説明成立。
こだわりの強い男、というような性格の描写までOK!
素晴らしきかな、プロップ!
シナリオ第二稿で
絵画を使って心理の描写をするシーンを入れたのですが、
キッカケをくれたのは、一本の映画と一冊の本です。
シルベスター・スタローン監督の『エクスペンダブルズ』には
三人の絵描きが登場します。
一人は、国を売り、国民を裏切った男。
一人は、父親に弓引く娘。
一人は、過ちを悔いる男。
三人の絵描きとそれぞれの絵は物語のバックグラウンドを支え、人物の行動に動機づけをしています。
小説の本は、題名を伏せます。
昨年映画化、高い評価を受けたミステリー。
原作で犯人は絵描きでした。
「どうしてこの人が」の理由で一番私を納得させたのは、絵を描く人間だったからという部分でした。
映画ではソコはあっさり、確か1カットの描写でした。
巷で大評判だった映画版ですが、私は納得いきませんでした。
映画のなかの登場人物とその描いた絵について、
私に最初に意識させた作品は、
クリント・イーストウッド監督の『ダーティハリー4』です。
ソンドラ・ロックの自画像!
中学生だった公開当時、私は「コワイ」と思っただけでしたが、
オトナになって、劇中の絵画の意味するものがわかりました。
ここ十年で最もインパクトがあったのは、
アルフレッド・ヒッチコック監督のサイレント映画『下宿人』(1926年)です。
ある部屋の壁の一枚の絵・・・。
クローズアップはされなかったと記憶しています。
しかし、その小道具は、画面という【絵画】の一部として、見事に人物の心理、物語の状況を表していたのです。
ゾッとするような発見でした。