モーション・ピクチャー・シューティング

MOTION PICTURE SHOOTING 自主映画制作記

極私的BLADE RUNNER‐下

前回からのつづき。

すでに伝説化が始まっていた映画『ブレードランナー』をテレビで初めて観れるはずが、
その放映日時は修学旅行とカブっていた・・・。

で、
「修学旅行なんていかなくてもイイ」と思ってはいたが、一人でボイコットすることも出来ず・・・

もうそれが京都だったのか大阪だったのかは忘れてしまった。
初日の宿で新聞を探し出す、テレビ欄を開く、夜9時の民放映画枠をチェック。
関西でもブレードランナーの放映を確認!

その日一日「夜にちゃんと映画が観れるだろうか」と心配しながらの史跡めぐり。
T君はフットワークも軽く、道中を楽しんでいたようですが。

宿に帰り風呂に入り飯を食い、就寝タイム。
時は来た。
男子大部屋は座敷の脇に小部屋があり、荷物置き場になっていました。
テレビはそこにありました。
14インチくらいの赤い枠のブラウン管を灯らせる。
襖の向こうでは枕投げ合戦が始まっている。
小さな画面では映画が始まっている。
私とT君はふたりきり、荷物の山の中に身を潜めておりました。
教師が座敷の方に「もう寝ろよ」と二回くらい注意に来たと思います。
私は「テレビのある部屋まで来るなよッ」と念じながら観ていました。
一度、好漢のY君が覗きにきたことをよく覚えています。
画面を見て「なんか気持ち悪い映画」と言うと、枕投げに戻っていきました。
はえんえん盛り上がっている。
二人だけ、初めての映画に釘付けになっている。
正直、
よくワカラナカッタのです、内容は。
ただでさえ暗い画面、映りの悪い小さなテレビ、複雑な世界観と謎めいた展開。
でも、信じながら最後まで観ました。
「俺たちは新しい伝説を見ている(ハズな)んだ。君たちより先にな!」


ブレードランナー』のような風景。
見た目だけなら月島、勝どき地区より似ているトコロがあるかもしれません。
高層ビルの密集率なら西新宿の方が上でしょうし、海沿いの工業地帯にも候補があるでしょう。

ロケ中、なぜ私はココにブレードランナーを感じるのだろうと考えてみました。

佃島、月島、勝どきは埋め立て地。
もともとあった、天然の日本の国土ではない。
そう、人工の島。
江戸時代から造船所が置かれ、石川島播磨重工業(IHI)が栄えた場所。
ハイテクというよりインダストリアルという響きが似合う。工業的、産業的。
古くから当時最先端の技術によって造られ、発展した町。
そして、ここは昭和の街並みを残しながら、最新の超高層マンションが建てられているのです。
近隣の豊洲、台場のマンション乱立地帯と違うものを感じるのはこの部分。

これがブレードランナーっぽい匂いの要因だ。

2019年、
ロボットと人間が共存。
超高層ビルの下に並ぶ屋台。
殺しの許可証を持つ男は腹が減って“うどん”を頼む。

この世界ではホンモノの生き物に超プレミアがついています。
ヘビのウロコに、よく見れば製造番号がついているのです。
天然と人工のモノが混ざり合って生きる世界・・・。


T君、元気だろうか。
私はブレードランナーのフォロワーにさせられてもう30年。
そろそろ、その証しをたてられそうです。
Y君、その後、あの気持ち悪い映画を観なおしたろうか。
観てなくてもいい。
枕投げよりアノ映画の方をとった同級生の一人は、
まだうだつのあがっていない男だ。確かに。


極めて私的、
ブレードランナーのロス・アンジェルス2019、最小の映画撮影用フィルムによる再現。
実景シーンのラッシュより、
part Ⅱ です。
簡易テレシネにつき、歪んだ画面、オリジナルの70%の画質なのを御了承ください。